2017年9月14日木曜日

完結編。 白山ジオトレイル7日目

穏やかな朝だった。最長ステージを越えて最終日を迎え、完走を視界に捉えた安堵感が選手の間に見られる。スタッフも最終日を名残惜しむように明るく楽しく準備しているよう
に見受けられた。


最終日のコースは前半こそサイクリングロードを7kmほど進むため楽に見えるが、その途中には崖下を望める明神壁があったり、その後にはトレイルを6kmほど進む、全体で約20kmのコースである。
1週間持ち運んできた食料だけでの生活もおさらばだ、ということを思いつつ最後の朝食をとる。それぞれの食べ物は美味しいのだが、7日間似たようなものが続くのはやはり少し辛くなった。
スタート時から比べるととても小さくなったザックをどうにか薄く、体の重心に近くして走りやすくなるようにパッキングし、スタートへの準備を整える。朝から濡れたウェアを着る生活も今日で最後である。清潔な生活を待ち遠しく思うとともに、いかにこの1週間単純で純粋な生活を送ってきたんだろうという感慨を覚えた。スマホはあるもののあまり見ず、現実から離れてレースのみに集中した夏休みであった。
スタートしてからは例によって1日1日ベストを尽くしている若岡さんが全力で飛び出し、キロ5分くらいじゃないかというスピード感でどんどん離れていった。自分はというと、今日は選手と一緒に出走したコースディレクター相羽さんの背中を見ながら選手の中では2番手で走る。相羽さんが何やら無線で会話しながら走っているのは大変だろうと思いながら追いかけていた。
明神壁の入り口で水本さんに、頂上でハチに刺された人が出たためCPがその下の分岐に変更されていることを知らされる。それはそれはと登っていくと、痛がりながら下りていくカメラマン田上さんとすれ違った。CPから折り返して全選手とすれ違い、下ではハチ刺されの治療をしているであろう車を横目に見つつ、サイクリングロードへ。退会として医療スタッフが万全なので安心してレースをできているのである。


平らなサイクリングロード途中のCP2およびその手前では満美さんの熱烈誘導応援、スタッフの応援を受け、トレイルへ突入。急な登りが何カ所かあり、昨日終盤と同じく巡視路のため鉄塔下の通過も続くが、脚に力を入れて登っていくと長くともそこまで辛いものではなかった。
トレイル最終盤はゆるやかな下りトレイルが続き、白山の山を離れるのを惜しむに相応しい道だった。下りてからはCP3で神社に参拝し、CP4で最後の木札をもらい、フィニッシュへ。最後に迷わないように、という配慮で道の分岐にはことごとく人が立っていたが、最後まで地図を見ながら走り続けた自分にとっては不要だった。もっと地図読み要素が増えれば自分が優勝できたかもしれない、などと考えるが、誘導スタッフに応援されるのも悪くないし、迷う人は本当にどこかへ行ってしまうので大会としては選手の満足度を高めるためにも最低限の誘導は必須だろう。
フィニッシュまで残り1kmもないCP4で冷たい水を柄杓一杯頭からかぶってリフレッシュして、ついにたどり着いた7日間のフィニッシュ。自分は感情を味わうためにゆっくりと歩いてフィニッシュした。



白山比め神社の駐車場で久しぶりに対面した、初日に預けたスーツケース。風呂へ向かうバスの出発まで時間があるので休憩もそこそこに、1kmほど離れたスーパーまで歩いて往復。往路では我慢できずに自販機で冷たいミルクティー缶を飲み干す。注目の、レース直後にスーパーで買ったものは、飲むヨーグルト(密度のある冷たい飲み物)、魚肉ソーセージ(味気のあって食べやすいタンパク質)、プリン2個(好物カスタードクリーム)、リンゴジュース(身体が求めるフルーツ感)であった。ゴール地点に戻るまで我慢できるわけはなく、魚肉ソーセージ2本と飲むヨーグルトは歩きながら消費。CP4手前で満美さんが選手を応援していたので横で話しつつ食べつつ応援する。皆疲れているが良い表情である。


こうして、自分の初めての白山ジオトレイルは幕を閉じた。
総括するのは何となく憚られるので差し控えるが、選手とスタッフが共に走る、温かいイベントであった。この場合の走るというのは、同じ目標に向かって支え合って進む、という意味合いに近い。
レースではあるものの、タイムを競うのは主眼ではなく、メインテーマは選手が白山周辺の山々の周遊にチャレンジする一週間の生活を皆で楽しむことだと感じた。
ジオファミリーに加わった一員として、来年白山ジオトレイルというイベントをファミリーと一緒に楽しむのであれば、スタッフとして関わる意向である。



長々とお読みいただき、ありがとうございました。

2017年9月11日月曜日

恐怖と疲れと意識の変化。 白山ジオトレイル6日目

朝は皆が準備している間もできるだけ寝る。ただ5時過ぎには起き出した。雨の降る中スタート地点へ移動する選手を見送り、自分の準備をする。そのうち自分の荷物の置かれているテントを除いて片付けられ、スタッフによるキャンプ場の片付けがだんだん進んでいく。キャンプ場は屋根のあるピロティ状のゲートボール場だったので、レイトスタートの選手はテントの外に荷物を出して準備していた。自分もとりあえずテントの外に荷物を出して、スタッフと談笑しつつゆっくりと準備を整える。降り続く雨は朝の間は止まなさそうだった。


選手3人でスタート地点へ移動し、やはり雨の中スタート。すぐにそれぞれのペースで走り出す。自分は真ん中で、車道を走っている間に前も後ろも見えなくなって単独走の時間となった。
雨が強く降り続き、まるで服を着たままシャワーを浴びているような時間もあったが、動き続けている間は体温を維持できて大丈夫という感じ。登りはストックをフルに使って軽快に歩く。先は長いので無理しない。
じきに第1CPに着き、大雨警報が出ていることを知らされながらも激励を受けて通過する。大雨の中、小さなテント屋根の下に集まるスタッフも大変である。

いつ先行者の最後尾に追い付くだろうか、速度比が2倍だったら2時間で、1.8倍だったら2時間半、公式は…、数式変形すると…、その時のおおよその距離は…などと考えながら引き続きアスファルト道を登り、登りきったら今度は長い未舗装道路下り。下りていくと、斜面から水が溢れ出てきていて、靴が完全に水没するような箇所も多々通過した。
ほぼ下りきってついに最後尾とスイーパーに追いついた辺りでは、5~10cm大の石が水と一緒に流れてくるような濁流が5mほどの幅で林道を横切っていてそこを渡らなければならないような場所も1カ所と言わず3カ所ほどもあった。さすがにそこでは足が流れに持って行かれて川に落ちて流されるか石が足首に衝突して怪我するという恐怖を感じ、慎重に慎重を重ねて、滑らないように最大限の注意を払って進んだ。ストックがあることで、濁流の下で見えない地面の足場を確かめることができて良かった。自分は体力があるからまだ良いが、疲れてゆっくりしか動けない選手には酷く辛い状況だろうと感じられた。
ただ、予報通り昼が近づくにつれて雨は弱まり、止んだ。林道を抜け、車道に出たときには安堵した。そこから先ではトンネルをいくつか抜けるため後尾フラッシュライトの点検あり。スタート時にザックに取り付けておいたのが大雨で外れていなくて良かった。

滑りやすいトンネルの端を歩いて抜け、橋を渡るとCP2に到着。さあここからの区間、どんどん追いつき追い抜くぞ、と思っていたら土砂災害警報発令によるレース中断をスタッフに知らされる。そうか、ちらっと見えた、CP横の集会所で休んでいた選手は休憩じゃなく送迎待ちだったのか、とすぐに気づいた。自分もその仲間に入って迎えを待つ。乗せられたスタッフの車で今日のフィニッシュ地点予定だったバードハミング鳥越までしばらく走って送られる。着くと、ちょっとした建物の中で、前を走っていたであろう選手たちがみんな休んでいた。低体温か、エマージェンシィシートに巻かれている人もいた。
相羽さんと赤坂さんが急いでレース再開後新コースの検討をしている間、お湯が準備されていたのでクラムチャウダーと補給食を食べる。寒くはなく、備えをできるだけ万全にする。新コースのテープ巻きをしてきたらしい高坂さんと愛馬さんが最終的な相談をしてコースが決定された。元々予定されていたコース終盤の電力鉄塔巡視路区間はそのままに、その区間の開始地点までロードをひたすら走る25kmほどのコース。準備ができた人から順次スタート。というブリーフィングもそこそこにレース再開。

どんどんスタートしていった前の選手を追い抜きつつCPへ。後ろには久保田さんがいて、自分のペースが遅いのか、差が開かなかった。

そのうち、自分よりだいぶ遅くスタートしたであろう若岡さんに昨日と同じように颯爽と追い抜かれる。気にせず、というか気にしてもしょうがないのできちんと道の分岐を確認してようやくトレイルの入り口に到着。水本さんの激励を受ける。
トレイルの足場は良くなく、ストックを使ってゆっくり進む。疲れから、登りで全くスピードが上がっていなかった。久保田さんに道を譲って先に行ってもらった。巡視路は尾根上に登るまでが急で、登ってしまえばそれほど辛くないという事前情報だったが、その最初の登りで限界に近づいていっていた。
しかしその際、登り疲れて立ったまま休憩しているとき、「もうレースは残り少ないのに、こんなに(慣れない)ストックに頼る必要はあるんだろうか」という考えが頭をもたげた。その答えは否で、レースなんだから最後までベストを尽くすということを考えるともうストックに頼って脚を残す必要はなかった。今残しても、どこに向けて残していくのか、いつ使うのか分からない。
ということで、それまで脚6:4腕という意識割合だったものを、それ以降8:2くらいにして脚に力を入れて進むことにした。進んでみると、当然脚に疲れはあるものの、これまでよりは軽く登れるようになった。いかに腕よりも脚の筋肉の方が強いか、ということを実感した瞬間である。
じきに久保田さんを抜き返して定位置の2番手になり、1つめの山塊を越えて一度通ったCPに戻ってきた。改めて水分とカロリーを補給して、ラストの区間へ。

鉄塔の下を何度としれない回数通過することから人によっては鉄塔地獄とも呼ばれる区間だが、自分はどこに鉄塔があるかを地図から予測し、次の鉄塔、次の鉄塔と近い目標に定めつつ進んでいたので全く苦にならなかった。また、時折変化するトレイルの方向、登り下りの程度から現在位置はほぼ分かっていたので力の加減は存分にできた。走れるところではできるだけ走った。走れた。
山を抜けて車道へ向けて降りるところでカメラマンと鉢合わせした。どうやらカメラマンは自分が走っているところをずっと追って撮影しているようだ。映像に残るということでときどき「もう少しだー」「下りてきたー」などと独り言を言いつつ、遂にバードハミングまでつながる車道に降り立った。明るいうちに下りてこられた。そこからフィニッシュまでジョグ。実際のところ歩きたかったが、撮影されているので走らざるを得ず、ずっと頑張って走り続けた(でも撮影されてないところで水分補給するときは歩いてた)。最後は1日目にも辿った風景を改めて辿って、6日目フィニッシュ!達成感のあるレースだった。

その後風呂にも入り、差し入れも含めて食事をして、更けた夜にフィニッシュする選手をゴール地点でできるだけ迎えた。ジオのドラマを感じたかったから。
自分はゴール地点での状況や表情しか見られなかったが、後に聞く限り山の中ではスイーパー・林道待機スタッフなども含めて完走を目指すドラマがあったようである。それをゴール地点での選手の歓喜の振る舞いから僅かでも感じられたのは良かったと感じている。
自分はフィニッシュ閉鎖時刻22時には力尽き、24時を過ぎてフィニッシュした最終ランナーを見ることなくジオ期間中最後の床についた。深夜に打ちつけた雨風の音は激しく、スマホを見ると竜巻注意情報も出ていて、図太い自分でも1時間ほど怯えて寝られない夜だった。

2017年9月7日木曜日

若岡さんへの意識。 白山ジオトレイル5日目

今日は、朝6:30までに各自で白山最高峰である御前峰に登頂して室堂まで戻ってくることになっている(標高差約250m、通常往復1時間程度)。晴れていれば御来光が拝めるので日の出前に登る意欲100%だが予報では晴れる確率0%なので、自分はできれば遅く出発しようと思っていた。
その一方で早く出発する人はどんどん出発していき、次第に小屋から人が減っていって、時間に余裕があることは頭では分かっていても心細くなってきた。結局予定より10分以上早く、スタッフのほかには若岡さんのみを小屋に残して室堂を出発。

寒さ対策ウェアギアをフル装備来て出て行ったが、朝なのに昨日の風雨時よりはいくぶん暖かかった。そして空は灰色で見えないが明るくなり始めている。奥宮神社で写真を撮ったりしながら少し登ったところで暑くなってきて手袋やネックウォーマーを外して冷気導入。そうしているうちに後ろから若岡さんもやってきた。若岡さんも少し暑そうにしていた。
自分は脚を労ってゆっくり登って、登頂から下山してくる選手たくさんとすれ違ったが、最後まで若岡さんには追いつかれず、僕が山頂で見事にガスガスの写真を撮ったりしている間に下っていったようだった。


6:05には室堂へ戻ってきた。時間があるので辺りを少しだけ見物すると、広く快適な拠点であることを実感した。晴れた日にまたゆっくり訪れたい。
全員で記念写真を撮り、約6kmの距離がある別山へ昨日と同じグループで出発。雨によるスリップを懸念し、辿るルートは予定より1カ所変更されていた。運営側による、環境への影響も含めた配慮である。脚調子は、面倒・節約のため昨日から貼りっぱなしのテーピングの効果もあってか、また少し快復してきたか、特に大きな問題ではなかった。
所々にある泥濘の道はできるだけストックで回避。木道ではストックを衝かない。そんな場所も含めてほぼシングルトラック続き。登りはそこそこ。切り立った大屏風の尾根は美しかった。
たどり着いた別山では、相変わらず天気が悪かったが、「着いちゃったか、これであとは下るだけか」という感想。後ろの第2班とそれほど離れておらず、下山路分岐までの間にすれ違った。ハイタッチを交わす。

下山路はひたすら下り。何度かストックや脚を滑らせて転ける。しかしケガには至らず良かった。下るほどに天気は回復傾向かつ気温は上がり、避難小屋に着いても標高は1900mほどあったが、レースウェアにウィンブレを羽織るくらいで大丈夫だった。
地元でも人気スポットらしい、霧がかった幻想的なブナ林を抜けつつまだまだ下る。次第に空は晴れ、暑くなってきた。曇雨天下での行動時間が長かったおかげで、久々に青空を見た気分であった。



林道まで出てまた少し歩くと、タイム非計測区間の終了地点、市ノ瀬に到着してスタッフの歓迎が待っていた。そこでは山の中でさんざん湿った衣類を道路に広げて乾かすことを試みる人が、若岡さんを皮切りに続出。自分も整理がてらやってみたら、少し乾いた。



身体には水分もしっかり補給して、10km少々のロードコースへ順次スタートする仕組み。久保田さんを先頭に、チャイニーズペア、志村さんを見送って自分がスタート。早々に3名は抜いて、久保田さんを追いかけることをモチベーションに走る。しばらく見えず、辛いのは辛いが1時間ほどで終わると考えつつ走る。カメラマン田上さんに車で追い抜かれつつ何度か撮られる。久保田さんに追いつく前に、自分より後のいつスタートしたか分からない若岡さんが知らぬ間に後ろから軽快に追いついてきた。抵抗する間もなく圧倒的なスピード差で簡単に抜かれつつ、「ファイトで~す」と声をかけられる。離されて見えなくなるまでも早かった。
それでも前を追うモチベーションは途切れず、7-8kmあたりでペースダウンした久保田さんを捉えてハイタッチを交わしつつ若岡さんによる抜かれ方に共感しつつ追い抜く。後はゴールまでの距離を地図で確認しつつ最後までペースを維持して林西寺へフィニッシュ。先にフィニッシュした若岡さんはコースを逆走していってしまった。後で確認すると、若岡さんとは2割ほどのタイム差があった。

自分は休憩を優先させたくて、しばらく休んだ後テント場に移動。洗濯と食事を済ませ、風呂に入って歴史的町並みの残る白峰の街を少しだけ散策してまた休む。明日、最長第5ステージの地図が配られており、緊張していたかもしれない。

例年第5ステージでは速い人がそれ以外の人より後にスタートする。ナイトステージを速い人にも体験して欲しいのだろう。レイトスタートの人がどこで先行選手を追い抜くか、というのもスタッフの興味になっているらしい。ブリーフィングでは後半スタートの対象者が発表され、自分と若岡さんと橋本さん(砂漠マラソンやグランドキャニオンでのレースに参加し、ジオには練習・トレーニングとして参加した60代)の3名だけだった。速い選手と大会から認められたようで、気持ちが引き締まった。望むところである。一般6時に対し、2時間遅れの8時スタートとのこと。
そこかしこでは最大の山場に備えて作戦会議する姿も見られた。

2017年9月6日水曜日

期間中最長の行動時間。 白山ジオトレイル4日目

昨日の夜に配られた地図はこれまでと違って茶色かった。つまり、標高が高いということが一目でわかる地図だった。地図の端にいつも記載されている高低差グラフを見ると、これまで200m間隔で打たれていた目盛りが白山ステージに限っては500m間隔になっている!白山山頂の高さは2,702m、いかに高低差が大きいかということを如実に示していた。
ひと部屋に寝ている人数が多い分、やや騒々しくて目が覚める。予定時刻より早く沸いていたお湯をいち早く見つけ、朝3:00という早々に朝食を食べる。今日はタイム計測が無い分気は楽だが、変わらず膝裏、ハムストリング下部は痛いので無理せずゆっくり登ろうと誓う。

3時頃にザーザー降っていた雨は幸いにしてスタート直前に止んだ。気分はよい。しかしスタート集合場所に来てからも雨具を着ていこうかどうしようか迷ったりしてバタバタ。挙げ句の果てには辺りは真っ暗なのにヘッドライトを出していないという始末。慌てて出して、暖かいので雨具は着ずにグループでスタートした。
最後の水補給CP1まではロードですぐ。日の出までは時間があったが、ライトをつけなくても歩くことはできる程度のほの明るさだった。
これから突入する国立公園内ではストックの先にキャップを取り付けるべきであることに気づき、CPで荷物をガサゴソして時間がかかった。グループの皆を少し待たせ、ようやく取り付けて登山道を登り始めた。しかし道中ところどころに深いぬかるみがあり、突いて歩いている間に片方ずつキャップはさらわれてしまった。泥に手を突っ込んで探してみたが見つからず、結局キャップなしで、道や気の根っこを傷つけないように、衝く場所に気をつけながら登っていった。

前半は足の痛みが強めで、グループ内では後ろの方で進んだ。登っても登っても続く登り。気温は徐々に下がってきて快適、そして周囲はほぼずっとガスっていて景色なし。修行のように、ただこなすだけのように進んでいく。



中間やや手前の奥長倉避難小屋で4時間経過。過去に比べてやや早めだというので、少し嬉しかった(ただ実際にはそんなことはなかった)。
その後天池、油池と過ぎていく間に流石に寒くなり、自分は雨具に加えてダウンジャケットまで着た。それでも雨風激しい山頂付近では非常に寒く、だんだんと早くこの場所を離れて体温を維持できる場所に行きたい、という考えしか浮かばなくなってきていた。 


それでも大汝峰の神社に辿り着いたときは、小さくとも立派で荘厳、よくここまで来たという達成感を抱いた。


あとは室堂に向かって下りるだけ、というとき、先導スタッフ山崎さんがまさかのコース失い。崩れやすい斜面を皆で通るはめになったのはご愛嬌。自分はと言えばしっかり地図を見て、まっすぐ南へ下りていかなければならないのに西斜面にいることを確認し、多少強引に道へ戻った。オリエンティアならではの地図読みに対する自信による行動だとは思う。
道に戻った後は、開けたところで(周囲の視界はないが)木村カメラマンが待ちかまえていた。とても元気である。
そして目に入ってきたのは万年氷。この真夏でも厚く積もった雪氷が広がっていた。感動ものの景色である。中国人ペア、特にタオさんは非常に興奮して写真を撮りまくっていた。


そしてまたさらに1kmほど歩いて室堂にようやく14:30到着。10時間行動をすることになるとは思っておらず、これまで6時間以下だったので身体に堪えた。足は登るほどに筋肉が温まってか、痛みは気にならなかったが、休むとぶり返す感じだった。
続々と室堂に到着する後続グループたち、彼らに1階を譲るように僕は2階に荷物を上げ、自分のスペースを広げて荷物を確かめた。4日目ともなると食料は目に見えて減ってきている。残りの日数でいつ何を食べるかを考えつつ、整理し直した。カロリー計算・食料配分は完璧だったように感じた。1階のテーブルではアルコールも入れて談笑する人の声が響いていた。皆、安堵感や解放感などなどに包まれているのだろう。
最終グループも難なく(?)室堂に明るいうちに到着し、早めに明日のブリーフィング。御来光は全く拝めそうになし。残念に思いつつも、無事に下りられることを願った。
高度のせいか疲労のせいか、大会中初めて顕著に浮腫んだ脚を珍しく眺めつつ、貸し出された布団と毛布、+寝袋にも包まれて就寝。毛布の肌触りはなんと柔らかいことだろうか。

2017年9月5日火曜日

脚悪し。だが粘走。 白山ジオトレイル3日目


まだ暗い中で起きる。まだ4時だから当然である。
もぞもぞと準備してご飯を食べ、相変わらずブリーフィングの最中も準備する。
今日は昨日にも増して最初だけトレイル、あとはずっと林道のコースである。長い上りは耐えるのみ。
昨日のレース終了後に出現し、風呂までの道中歩きでほぐそうとして全くほぐれなかった両膝裏の謎の痛み・赤みは変わっていないが、膝裏からハムストリングにかけて入念にキネシオテープを貼り、負担をかけないように進むことにする。

スタートしてすぐ、若岡さん、鹿野さんと並走する。ストックを使って進む鹿野さんと自分を尻目に脚のみでずんずん進む若岡さんはさすがである。水が流れて川状態になっているところで自分が前に出たが、その後の急な登りでしんどくなって道を譲った。

その後林道に上がったところのCPで水補給。しばらく進むと、なぜか若岡さんが後ろから迫ってきた。登り途中のトレイルで道を間違って林道を進んでしまったらしい。(地図を見なかったら何度も道を間違えるんだな~という感想。)若岡さんは先行していた鹿野さんを追って追いつき、そのまま並走して、脚の辛い自分を徐々に離していってしばらくすると見えなくなった。

緩く長い下りは飛ばさないまでも着実に走って下りきったが、すぐ後ろから後続ランナーが追ってきていた。CP2に入るところで若岡さん・鹿野さんとすれ違い3番手で到着するが、お参りと水浴びをしている間に後続2人と一緒になった。CPを出たところで3日間コースに出場の若月さんと一緒になるが、左へ曲がるところが分からずに、今大会唯一のミスコース(遠回り)をした。また、そのおかげで西川さん・久保田さんとすれ違い、「初めて走っているところ見ましたよ!」と言われた。

その後も分かりづらい車道が続いたが、採石場のようなところに入ってから長い登りが始まった。傾斜は緩いがひたすら砂利道が続く。その距離6km。オロロはいないが風景に乏しく、無心で歩き続けるのみだった。若月さんとは離されたり縮まったり。登りが終わるところで追いついたが、下りで自分は脚が痛くてスピードを出せず、若月さんにどんどん離されていった。下りも長くてCP3まで約5km。満足に走れない中でも着実に進んで奥地のCP3にたどり着いた。


水本さん、ミミさんから冷たい水の歓迎を受け、前半3日間最後のパートへ。少し登ったあと平坦な林道。対岸でCP3へ向かって下るオレンジ色の稲妻(橋本さん)や西川・久保田ペア、その他の人影が見えた。そして、平坦な道で走り続ける高坂さんに追い抜かれた。追いかける力はなかったので、応援しておいた。

その後しばらく進んでいると、前方に人影が見えた。高坂さんが歩いているのか?と思ったが、ペースダウンした若月さんだった。追いつけそうな人が見えると追いかける気力が湧き、下りを快調に走り出すことができた。若月さんに追いつき追い越し、スキー場に入ったところで高坂さんの後ろ姿を捉えた。しかし自分の足音に気づいた高坂さんが最後の力を振り絞って走り出し、結局追いつくことはできないままフィニッシュ!
終わりよければすべてよし、という程度に気分は晴れ晴れ、水浴びも存分にできて気持ちよかったが、レース中のアドレナリン放出が終わった後は膝裏が改めて痛み出し、温泉への往復ウォークは非常にゆっくりだった。
お風呂では若月さんに「負けず嫌い!(自分も高坂さんも)」との評をいただいた。

荷物をキャンプ地へ運んで3日間コース終了パーティ待機。羊の鳴く、のどかな時間だった。


パーティでは地元の郷土料理、ただし7日間コースの人には汁物(報恩講汁:きのこ類、大根、人参、堅豆腐の入った醤油味)のみ振る舞われた。美味しかった。











キャンプ地に戻ると雨。急遽、テントではなく体育館内の別室泊になった。
そして白山ステージのブリーフィング。チーム分け発表は緊張感漂う時間だった。

2017年9月4日月曜日

順位はモチベーション。 白山ジオトレイル2日目

スタートの2時間ほど前、朝5時に目覚める。アルファ米を食べて今日のレースに備える。果たして2日連続の、そしてこれからまだ6日も続くレースで身体が動くのか考えつつ。
静かな朝だが、自分はブリーフィングの直前まで、そしてブリーフィング中も日焼け止めを塗るなどの準備に追われていた。

この日のコースは昨日と同じように最初に少しだけトレイルがあって、あとはほとんど林道。ただし最後に少し山頂ピストンと激しく急な下りがある。1日目よりトレイル率がかなり少ない分だけ楽である。というか白山ステージを除けば1日目が一番トレイル率が高い。


スタートしてすぐに若岡さんに次ぐ2番手に。すぐに離された。あっという間である。

サイクリングロードをしばらく走ったCP3で水補給と水浴びをしている間に高坂さんに抜かれる。そしてその後は沢沿いでオロロ多発地帯、洗礼を受けるエリア。当然自分もまとわりつかれ、噛まれると払わざるを得ない程度には痛い。タイツやアームカバーの上からでも容赦なく噛んでくる。頭部の虫除けカバーを取り出して装着するよりも、早くこのエリアを抜けることしか考えずに一心に進んだ。

オロロ地帯を抜け、下りに入って快調に走っていると高坂さんに追いついた。しんどそうだったので追い抜き。再び2番手になって満美さんの待つCP5に到着。聞くと若岡さんとそう離れてないそう。水を補給してホースでたっぷり浴び、体温を下げて長~い登り林道へ突入。
暑いのは暑かったが、入り口の100m少々ある真っ暗なトンネルが涼しくリフレッシュ。また高度を上げるほどに暑さはマシになった。登りの最中に初めてスローバーを食べてみたら、この暑い中では水と一緒に口に入れないととても食べられなかった。選択をミスったかと思ったが、スローバーは逆にゆっくりな白山ステージでは大いに役に立つことになる。
林道頂上分岐では、ちょうど若岡さんが山頂を通過したことを知らされる。「あれがこれから行く山頂だよ」と教えてもらったときに出た自分の答えは「ちょっと遠いですね(*_*;」というやや疲れ気味な感じ。
3分ほど行くと若岡さんとすれ違う。山頂へ登りきってレッドクリフ夫妻と挨拶を交わし、下りたところで鹿野さん、高坂さんとすれ違った。
その後の急な下りはぼちぼちと。ポールがない方が早く下れると思うが、脚へのダメージの大きさを考えるとどちらがいいかは分からない。ポールの扱いに慣れてない分遅いのもあるだろう。
下りきって、昨日よりは短いロードを走ってフィニッシュ。
最後の最後でフィニッシュゲートが見えずに地図を取り出したりしたけど、2位確保。ペナルティ含めればこの時点では辛うじて暫定1位だっはず。しかしやはり疲れはだいぶあり、片づけるまで時間はかかった。それでも鶏ささみパックとほうれん草入りクラムチャウダーは美味かった。

この日は風呂まで片道3kmもあるので、日が傾く16時頃まで待ってから、久保田さんと一緒に歩いていった。遠かった。
明日は更に1時間スタートが早いので、暗くなる頃には寝に入ってた。自然に合わせるスタイル。

2017年9月3日日曜日

地図は大事。 白山ジオトレイル1日目

朝5時にホテルのベッドにて目覚め。出場用のウェアに着替え、シュークリームやパンなどの朝食を胃の中に詰め込む。白山比咩神社駐車場にて受付待ちの時間、自販機の缶コーヒーを飲んで最後の手持ちでない飲食をする。


全員が個人で受けるインタビュー動画では、瞬き多すぎで不審。神社への参拝で厳かな気分になり、いよいよスタート。見送った妻の「いってらっしゃい」は涙声だった。少しの間感傷に浸る。
この重さを背負って走ったことは無かったので、ペースを探りながらのジョギング。先頭3人には見える位置ながらも離され、5番手になった。
しかし、小さな里山を越えた後の街中に入るところで先頭3人が分岐を間違えコースを外れていった。自分とすぐ近くを走っていた鹿野さんはちゃんと地図を見ていたので分岐を曲がって正規コースへ。実質先頭に躍り出た。
そのままCP1金剱宮(きんけんぐう)まではしゃべりながら併走。その後の登りで僕はストックを取り出し、離していった。

CP2獅子吼(ししく)高原に着いたとき、先頭3人のうち高坂さんは正しいルートへ戻ったが2人は前で走っているがペナルティがある予定であることを聞く。まだ誘導の案配の分からないコースの前を走っている人がいると分かり、ややほっとした。
その後は尾根上をしばらくスピードハイク。そして沢へ下りていって、増水した清流をいくつも越えていくところで藤橋さんに追いつき、CP3まで前後する。


CP3の後は1人旅。しかしコースマップを大会側から貰ったA4の薄い袋で腰のポケットに入れていたらくしゃくしゃになってしまってうまく読めない。そしてトレイルの登りで左足後ろの靴擦れがいよいよ痛くなってきて、後々に響かないように止まって腰を下ろして絆創膏を貼った。
ロードに下りてからは暑く、そして2km程度が長く感じ、歩きも交えるほど疲れていた。肩もザックの重みの負担で痛かった。

ついに1日目フィニッシュ。5時間もかかっていなかったが疲れはひどく、しばらくは荷物を片づける気力無く、座り込んでいた。
落ち着いたら水道の水を浴び、風呂へ。石鹸水をポリ袋に入れてウェアを洗濯。慣れない食事や荷物の整理をしていたら、日は落ち夜は更けていった。なお、ミスコースしてトップでフィニッシュした若岡さんは1時間ペナルティ+正規コース再送分加算となり、自分がトップに。しめしめ、ちゃんと地図見ないとな、と内心思っていたのは内緒。
翌日以降の地図は、念のため持参していたA3の袋に密封して、折りたたんでザックの前ポケットに入れるようにした。

現実感は? 白山ジオトレイル事前準備~0日目

白山ジオトレイルに初めて出場した経験を記録しておこうと思います。

■きっかけ
2017年2月に開催された第2回とりけもロゲ港北冬の陣、およびその夜の交流会にて、白山ジオトレイルのアピールが行われていた。中澤恵子さんやレッドクリフペアらが来ていたと記憶している。
そこで少し話を聞き、自分に対して直接は勧誘されなかったものの、実は興味を持っていた。
ロゲ後にイベントを調べ、妻に伺いをたて、あまり拒否感はなさそうだったので勢いで申し込んだ。その後、東京五反田で開催された説明会にも行った。あまり現実感はなかった。
白山ジオトレイルに出場するという現実感は8月に入ってから準備の過程で徐々に形成されていき、ジオ前週の週末でようやく実感できるようになってきていた。


■準備
体力的には、本番用のザックで10kg以上の荷物を背負って長時間山歩きをするようなトレーニングおよび長時間におよぶ走り込みは本来当然すべきであるのだが、あまり時間が取れず、やらなかった。今でもやるべきだったとは思っている。
装備については基本的なものは手持ちで揃っていたが、ザックやシューズや補給食については分からないことも多かったので、とりけもさん家に伺って聞きに行った。歓迎していただけて嬉しかったです。そこで、適切なザックのサイズや擦れ対策の重要性について聞いたのが印象に残っている。
シューズやザックを買ったのは7月に入ってから。結構直前まで、補給食や嗜好飲料の追加など色々揃えていた。

結局、揃えた装備のは以下の通り。
ザック:Ultimate Direction FastPack30
シューズ:Salomon SpeedCross 4
サングラス:オークリー
トレッキングポール:Black Diamond Distance FLZ
シュラフ:Finetrack 2x2(室堂山小屋では毛布が供給されるので、もっと薄くてよかった)
マット:サーマレスト女性用
手袋:指ぬき・フル各1組
日焼け止め:アネッサ
○行動食:
メダリストエナジージェル7個、チョコえいようかん5個、抹茶・チョコようかん各2個、スローバー8本、エナジーみそ130g、ピットインリキッドジェル1個、山よりだんご1袋、塩熱サプリ24個(1袋)
○拠点食:
アルファ米9食、カップヌードルリフィル3食、鶏ささみパック4個、畑のカレー2個(袋から出してラップ)、みそ汁3個、乾燥ほうれん草(野菜が欲しくなるかと思ったので)、m&m3袋
クラムチャウダー4袋、カフェオレ5本、紅茶オレ3本、スキムミルク100g、粉末緑茶
○サプリ系:
L-グルタミン・カルニチン粉(毎日粉のまま飲んだ)、Nature Madeマルチビタミン&ミネラル6日分、サカナのちから8袋、アミノバイタルプロ14袋、スーパーメダリスト10袋、REPLENISH10袋

その他:手鏡、ホイッスル、トイレットペーパー、防虫スプレー、スマホ2個(個人用、会社用)、スマホ充電器、プラティパス1L(予備水ボトル)、ヘッドライト、ハンドライト、赤点滅ライト、サバイバルブランケット、コンパス2個、携帯トイレ、ナイフ、テーピングテープ(ホワイトテープ、Vテープ2枚、Xテープ10枚、キネシオ1巻)、ポイズンリムーバ、熊スプレー(中型)、手指消毒用ジェル、ガーゼ、絆創膏4枚、安全ピン、歯ブラシ、チタンカップ300ml、プラ製フォーク・スプーン、ナイフ、お守り類

ウェアは
阿闍梨シャツ(夏用)、C3fitショートタイツ、アシックス短パン(ポケットが必要だから)、CEPカーフタイツ夏用(購入)、itoitex、SKINSアームカバー、ZXUバイザーが基本で、基本的に毎日これを洗って着続けた。4日目以降は終日乾くことはなかった。
雨具はトレントフライヤージャケット、バーサライト上下+パワーメッシュ上。防寒具としていつもの化繊ダウン。何にでも使えるチューブバンダナ類3枚。あとパックタオルと手ぬぐい。
あとはリラックスウェアとしての短パン、Tシャツ、パンツ、予備靴下と、サンダルは前日に泊まったホテルの使い捨てスリッパを2足頂戴して持っていった。

粉飴はカロリー調整用として最後まで迷って金沢まで持っていったが、結局ザックには入れなかった。アルファ米orヌードルを朝夕の基本食料と考えて毎日2個ずつの配分。
カロリー/重量比を考えると、純粋な炭水化物が4で、脂質が含まれるほど効率は良くなるが、メダリストエナジージェルは2程度で少々重い。だが6日目に喉を通る補給食を考えるとこれぐらいしか考えられなかった。
概して食料計画は想定通りで、終了時にはほとんど余らなかった。電解質ドリンク用粉末は余ったが、暑くならなかったせいなので仕方ない。余るのが必然である。後半には食事内容に飽きてきたが仕方ない。スキムミルクと粉末緑茶は、濃さのある飲み物を飲めるということで非常にありがたかった。個人的必須装備。
参考までに、最終日フィニッシュ後に真っ先にスーパーに行く過程で買ったのは冷たい紅茶花伝缶、飲むヨーグルト、魚肉ソーセージ、プリン2個、りんごジュースである。


■0日目
朝7:30頃に家を出て新幹線で金沢へ。東京駅で買ったベーグルサンドを車内で食す。美味い。大荷物を持った外国人客が多かった。
金沢駅で少々時間があったので、駅横のショッピング施設で鶏天うどんを食す。これも美味しかったが、お腹いっぱい。
レンタカーを借りて受付会場へ。突然右左折専用レーンに変わる金沢の道には少々戸惑った。2時前に会場着。雰囲気に戸惑いつつ、また暇な妻をなだめつつ、説明会の開始を待つ。装備チェック後の荷物従量計測では水なしで9.8kgだった。
説明会・開会式は上段のテーブル特等席で聞く。他に見送り・応援の人がいなそうだったので下には居づらかった。説明会は愉快でためになる内容だった。食事量は十分。
終了後、美川インター近くのホテルへ。荷物を再度広げて確認して詰めなおして、就寝。最近あまり長時間寝られていない。